2010年 03月 23日
記憶が…
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奥さんや身内がベッドのまわりに集まっている.僕はぼんやりした頭のまま眠りに落ちる.
そして朝,誰もいない病室で目覚める.腕には点滴.けれど体に痛みはない.
ここはどこだ?オレは一体どうしたんだろう??
この連休は家族と今シーズン最後のスキーへ出かけた.
シーズンも終盤に近づき,ゲレンデも暖かく雪もかなり重くなっていた.僕はいつものように子どもと一緒に滑り,お昼はレストハウスで食事を取っていた.
…と,ここで僕の記憶はいきなり途切れる.
そして次の記憶は冒頭のシーンからはじまる.
これはすべて実話である.一昨日スキーに行って,お昼を食べた.そこからの記憶がまったくないのだ.気が付いたら病室で寝ていた.なにがどうなったのか,さっぱりわからない.
こんなことは初めてである.
その後,子どもをはじめ一緒に行った家族の話をまとめるとこういうことになる.
お昼を食べてから,僕は一人で滑りに出かけた.
数本滑ると戻ってきて,今度は子どもを連れてリフトに乗り,山頂から滑り下りてきた僕は,コブ?の先から飛び出し,そしてそのまま雪面に叩きつけられ動かなくなってしまった(見ていた子どもは「死んだ」と思ったらしい).
様子を見ていた救助隊が駆けつけたものの,僕はすぐに立ち上がり「大丈夫です」といって再び滑り始めた.けれど再びリフトに乗ったものの,表情はうつろでワケのわからないことを口走っている.
ろれつの回らない僕を家族は止めたらしいが,「大丈夫」といってそのまま滑り始め,しかしやはり途中で動けなくなってしまい,結局スノーモービルで下ろされ,そのまま救急車で病院に搬送された.
そして冒頭のシーンにつながる,らしい.
周りから話を聞けば聞くほど,とても自分の行動とは思えない.
それってかなりヤバい状況だったのではないだろうか.なにしろ,その一連の行動を自分が全く覚えていないのだ.酒に酔っていたのならわかる.しかしシラフだ.原因はもちろん雪面に叩きつけられた際に頭を打ったのだろう.
ただ僕は病院に搬送されるまで朦朧としながらも意識はあったみたいだし,同じ事をうわごとのようにずっと繰り返してもいたそうだ(「今日に限ってヘルメットをしていなかった…」と何度も悔やんでいたらしい).
搬送されたのはとてもきれいな病院だった.山の中にあり,窓には障子がはまっていた.
朝ひとり病室で目が覚めたとき,ベッド脇の見舞い客用の椅子がアールトスツールだったのを見て「あ,アールトだ」と思ったのだけれど,奥さんによると前日病室に搬送された際の僕の第一声が「あ,アールトだ」だったそうで,それを聞いて大丈夫だと思ったとか思わなかったとか….
ただ面白かったのは子どもの反応で,僕が動かなくなってしまってから,ひとりで山を下りてきたらしい.かなりショックだったようで,「もうスキーやらないっ,帰る!」といって相当ビビっていたとか.ホテルでは売店で「おまもり」を買って,ずっとしおらしくしていたらしいが,僕の無事がわかると急にまたいつもの調子に戻ったらしい.
家族には本当に心配をかけてしまったけれど,とりあえず今のところ後遺症はないみたいだし,子どもの慌てぶりをあとから聞くのは結構愉快だったりした.
それにしても,一昨日の記憶が半日分ごっそりないというのはなんとも気味が悪い.そしてその間の行動を人から聞かされるというのは,まるで夢遊病者のようである.記憶を亡くしてしまう人ってこういう感じなんだなと思った.ちなみに失った前後の記憶は今も戻らない.
縁起でもないけれど,あのまま意識が戻らなかったら人間て結構あっけないものだと思った.
もっともこんな所で人生終えるつもりはないけれど….それにしても貴重な経験をした.
ちなみに今回の一件で僕が得た教訓を,あえて一言で言うならこういうことになるだろう.
「病室の椅子は,やっぱりアールトに限る」
アールトスツール(左)とKARIチェア(右).KARIチェアもフィンランド製
by riotadesign
| 2010-03-23 09:01
| 遊び